はじめて自分でCDをつくりました。
誰かのためじゃなくて、本当に自分のためだけに作り始めた作品だったけど、たくさんの方の協力を得て作っていくうちに曲たちがどんどん外向きになっていくのを感じました。
詩曲のパーソナルな部分に加えて、今まで見守っていてくれた方への感謝やらこれから出会えるであろう人たちへの期待やら緊張やら。いろんな感覚が混ざって完成しました。
大変なことたくさんあったけど楽しいことの方が100倍くらいあったと思う。
それを忘れたくないので、自分用に記録しておくことにします。
備忘録的セルフライナーノーツです。
とりとめのない文章だけど、みなさんもCDを聴きながら読んでもらえたらおもしろいんではないかなあと思うので、お供にどうぞ。
ハトと電線。たくさんの方に届くといいな。
2018年4月1日
こんのひよせ
1. 彼女の名前
この曲を書いたのは2016年。もう一昨年か。
以前住んでいた街に公園があって、そこがわりと好きで特に理由もなくふらっと散歩しに行ったりしてました。
春になると桜が咲いて、秋になるとイチョウの葉がいっぱい落ちて道がふさふさになる。
その道を歩いている自分を想像して書いた曲です。
人との出会いや別れってたくさんあって、それってきっと特別なことじゃない。
だけどそのひとつひとつを特別だと思ったっていいし、大事にしたっていい。
出会いだけじゃなくて、別れさえも。
そんな歌です。
ベースラインから曲を作ったのはじめてかな。かなりいろいろ注文を出しました、すみません。
ベースとピアノっていうコンビを良く聴かせたかったんです。
歩きながら聴くとちょうどいいテンポにしているのでぜひ歩きながら聴いてみてほしいです。(わたしにはピッタリなんだけどみんなはどうかな)(でも車とかには気をつけてね!)
終わった恋を、遠くから振り返るような曲ははじめて書いたなあ。
わたしも大人になったということでしょうか。
2. 走る馬
2014年作。
電車に乗って、と歌詞で書いてます。
わたし乗り物が好きで電車やバスをモチーフに曲を作りがちなんです。
電車の窓から見える、風景がささささーっと流れていく感じ、あれをね、走ってる時に感じることないですか。
自分の足がビュンビュン自分を遠くへ連れていってくれているような感覚。自分が自分の体に乗っかってるみたいな?あれです。あれを書きたかった。うまく出来てないけど。
まあこういうあっけらかんとした歌詞を書くのはこれが最後だろうなあと思っています。
そう、なにかとてもバカみたいな曲にしたいなあと思って最初のタイトルは「馬鹿(うましか)」だったんだけど、あんまりだと思って馬だけ残しました。
実は男性に歌ってもらう用に書いた曲で、なのでキー的にちょっとむずかしいところではあったんですけど、デモを聴いたもらった方々の反応がよくて驚いたのを覚えてます。
みんなに気に入ってもらって録音出来た曲って感じです。
レコーディング時、加藤ケンタくんのギターソロが素晴らしすぎてもう弾き始めた瞬間から大爆笑でした。
1回しか弾いてなくて、弾き終わった瞬間にドヤってたケンちゃんの顔、忘れられない。最高。
ライブで歌うのが楽しみな曲です。
3. 鳩と電線
これは「素晴らしい日々」というタイトルでけっこうライブでも歌っていた曲です。
2012年作。とても素直なカントリー調の曲です。
歌詞とても気に入っていて、たぶんわたしこういう「別れ」の場面の「はじまり」の雰囲気をずっと歌っていくんだろうなあと思っています。
登場人物は恋人同士なのか、親友なのか、わかりません。
とにかくとても親しい間柄のひとがじぶんのいない世界に旅立って行く。
そんな時に出来ればそれを「幸せなこと」としてとらえたいなあと思うんです。
旅立つひと、残るひと。去って行くひと、ここにいるひと。それぞれの選択をなるだけ尊重出来る人間でありたいなあと。
「別れの後にやってくる未来の明るさ」をやっと歌に出来た曲だったのかな、と思います。
この曲って録り方がいちばん変則的で。
AGはイチゲさんが家で弾いて、そこにわたしも家で仮歌と仮コーラスをのせて。
その後スタジオでKeyを入れてから歌の本チャン。コーラスはなんと仮のものを使ってます。(すごいことなんだよ!主線が入る前のコーラスがピッタリ合うって!)
そこに上物(ピアニカ、シェイカーなど)を最後に入れました。
何気にピアニカを作る作業が楽しかったです。若いエンジニアの子と二人でさ。うふふ。
今回「鳩と電線」とタイトルを変えたのはヘルマンの岡本洋平くんの影響です。タイトル変えてみてもいいんじゃない?と提案をもらいました。もともと彼は今回のアルバムを作るきっかけを作ってくれたひとり。大きな感謝を。
しかしまさかアルバムタイトルにまでなるとは思ってなかった。Facebookでふざけてつけた名前だったんだよ鳩と電線。
とにかく鳩に足向けて眠れない。大事にしよう。
4. 雪の降る街
ずいぶん前に作った曲。2010年とかじゃないかと(不明)
好きな曲だったんだけど、ライブでの再現がむつかしいかなーとずっと放置してました。
今回曲選びの段階で一応候補に入れたんだけどまあやんないかなと思ってたらバンドメンバーから推薦があって。とてもうれしかった。
やっと陽の目を見せてあげることが出来てとてもうれしい。
こういうフラットにうたう歌、けっこう好きです。
みんなとのレコーディング後に当初予定になかったシンセを某宅で足しました。いい塩梅に弾けてよかった。
「鳩と電線」とかと歌詞のテーマは似てるんだけど、もっと若い感じ、なにかこう、…別れの悲しさに飲み込まれている最中なんだよね。
この鼻の奥がツンと痛いような、それをこらえながらむりやり前を向く感じ、いいなあと思います。
いいよなあ。こんな風に世界にどっぷりひたるようなことって最近無いもの。つらい思い若いうちは買ってでもしとけってことね。
今回この曲をしっかり聴き直して、わたしと共に書く曲も変わっていくんだなあと実感しました。
いま音源化できてよかった。
たぶん、このあと何年かたって「彼女の名前」の世界につながるんだと思います。ちょっと時代考証ずれるけど。みなさんもよかったらそんなつもりで聴いてみてください。
5. ぎんのあめ
2009年作。なんとまあ、9年前。
当時のバンドメンバーの家でこそこそとデモを作った思い出があります。イモちゃん元気かなあ。
バンドをやめて(やめようと思っていて?)全部をひとりで決められることのうれしさと、それまでたくさんのひとに守られてきてたんだなあという自覚がバッとでてきたときのさみしさ、よく覚えています。
自由と、そのための不安。それまで「守られていたんだな」という環境の素晴らしさも感じました。
この曲は最初に書いてから何度も歌詞を書き換えたり書き足したりしてたんだけど、今回アルバムに入れようって思った時にいちばん最初に作った時のものに戻しました。
気持ちの変遷がたくさんありました。
ひとりになったからこそ、ひとはみんな違うもんだな、それでいいし、それがいいんだな、と思えて。
よりひとと一緒にいられることの幸せと、ひとと一緒にいられないことの悲しさを理解出来たように思います。
ラブソングなんだけど、男女のひとつの恋愛を歌ったものではなくて。
ラブソングの体を借りた、ひととの関わり合いについてのものなんだよね。
(もちろんどのように受け取ってもらってもかまわないんだけどね)
わたしにとって特別な曲です。この曲をつくってはじめてソロでも歌っていこうと思ったんだよ。
6. バス停で待ってて
これもずいぶん前に書いた曲。2010年とかかなあ。
好きなやつです、とても。
淡々としたリズムに乗せて不思議なピアノが踊るような音が聞きたかった。
わたしの超絶不思議デモのピアノをリアル再現+洗練アレンジしてくれたピアノのROSE嬢に大きな拍手を。
きっととても幼いカップルなんですね、中学生とか。思春期というやつです。
この時期って、世の中のいろんなことが急に自分に降りかかってきて、怖さや悔しさや歯がゆさ、そういう苦しさをはじめて知るころで。だからこそこの時期の恋人たちの間には互いを支え合う「同士」のような結託があるような気がして。
淡い初恋。よりももう少し苦いけれど。
わたしが思春期に住んでいたところは電車の便が悪くて、車やバイクにまだ乗れない子供は自転車やバスでしか外の世界に出られなかったの。
バスは1時間に1本とかしか来なくて。
いつ来るんだか分からないようなバスに、これからどうなるんだか分からない夜をあずけるような、そんな世界です。
その後にきっとずっと一緒にはいられないふたりが「あの季節、確かに一緒にいたんだなあ」と大人になってふと思い出せるような、いい恋であってほしいです。
レコーディングをお願いしたエンジニアのうっちぃ先生にミックスを根気よく付き合ってもらいました。遠い記憶の幻のような映像をたぐり寄せるような音を作りたくて。本当にありがとうございました。
7. 金色夜叉
わたしが今まで書いてきた曲って『鳩と電線』の「となりで見てた流れ星を半分くれた」とか『ぎんのあめ』の「少しだけ抱いて、あたためて」とか、だいたい受け手側なんですよね。「~してほしい」という側。
この曲はたぶんはじめて「~してあげたい」という視点に立って書いた曲なんじゃないかな。「月をあげたい」ってね。
自分で「お」っと思いました。母性?とか。大人になったということでしょうかね。
本当に5分くらいで書いた曲で、こういう曲は歌が自然でいいですね。好きです。
がっつり全部のアレンジを岡本洋平くん(Hermann H.&The Pacemakers)にお願いしました。
ギターと歌だけ入れた簡素なデモを洋平くんに渡して、どんな風になるんかなあと思っていたらスタジオであれよあれよと化けていったのには本当に驚きました。天才か、と思いました。
ピアノを弾いてくれた溝田志穂ちゃんと洋平くんのコンビはさすがで、ピアノのソロとか作ってるの見てて楽しかったなあ。
本チャンを歌う時も、洋平くんと隣同士のブースに入ってせーので演奏したんだけど、それが気持ちよすぎて本当はもっともっと歌いたかった。あんなレコーディングははじめてだった。
何回聴いても鳥肌がたつ。とても素敵な曲が出来てうれしいです。
昨日がちょうど満月の日で、まんまるな月を見てふっとこの曲を作った時のことを思い出しました。
恋人へのラブソングというだけでなく、家族や友人、あなたの大切なひとを思って聴いてもらいたいです。 きれいな月を、見せてあげたい相手を思って。
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